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ますだ沼暮らし。

加藤シゲアキ『インターセプト』感想

野生時代(2015年2月12日発売)に掲載された加藤シゲアキ先生の短編小説『インターセプト』を読みました。まだ1回しか読んでいないのですが、ファーストインプレッション、ということで感想を書いていきたいと思います。

小説 野性時代 第136号 (新野性時代)

小説 野性時代 第136号 (新野性時代)

以下、ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
本編を読む前に分かっていた情報がいくつかありました。まずタイトルが『インターセプト』であること。
インターセプト【intercept】
球技で、相手側のパスを中間で妨害し、ボールを奪うこと。カット。(大辞林より)
内容にアメフトと恋愛心理行動学が関わってくること。男性が女性を落とそうとする話だということ。そしてシゲがRINGで書いていた(後味は保証しません)の一節。
 
ふむふむ、男性が女性をインター(間)でセプト(取る)=横恋慕しちゃう話ね、と勝手に思っていた私。
読み始めて、主人公の林が狙っている安未果は誰のものでもないという設定だったので、そこでまず、あれ?と。そしてタクシーのシーンで林に奥さんがいると分かり、一瞬違和感を覚え………そのことに気づいた時、うわ〜!インターセプトってそっちか〜〜!と心の中で叫んでしまいました。
 
インターセプトは特にアメフト用語として使われているようですが、アメフトが日本ではマイナーなスポーツであることも物語の要素として重要で、その要素と言葉の意味とを考えると悔しいほどに上手いタイトル。作者のセンスが最も問われるのがタイトルだと個人的には思っているので、シゲのセンスの良さに唸るばかりです。
 
林と安未果の会話中にカクテルが登場するというのもシゲらしい。可愛らしくて男性に簡単になびかないこの孤高のマドンナ…でも実は恋愛に対して異常な濃さを持っている、そんな安未果と、ロングアイランド・アイスティーがシンクロしてきます。こういうお酒って気が付かないうちに酔いが回って支配されますもんね。
ロングアイランド・アイスティーは、ウォッカベースのカクテル。紅茶を一滴も使わずに、見た目および味を紅茶に近づけた点が特徴のロングドリンクである。ウォッカの他にもジン、テキーラなどを使用する。飲みやすくアルコールの強さを感じさせないが、実際はかなりアルコール度数が高い。Wikipediaより)
 
安未果の部屋は林の捨てたもので溢れていてストーカー行為をしていたことが発覚しましたが、このことに対して、(過激な)ファンを意識しているのでは?というような感想を結構見かけて、なるほど、と思いました。私はそういう視点では見ていなかったので。(小説を読んでいる時にシゲが書いているということを意識していなかったからかもしれませんが…)
 
私はただ、安未果の部屋が“捨てられた”もので作られていたことの意味を考えていました。
だって林さんが捨てたもので作ったこの部屋に唯一足りないのって、林さん自身なんだもん。
この言葉が安未果の異常さを物語っているようでゾッとします。だって私なら、“捨てていない”もので作りたいもん。でも…だからこそ最後の「わたしのことは捨てないでね」が、重みを持ってくるのでしょうか。
 
 
 
作者のセンスが最も問われるのがタイトル、と言った私のこの記事のタイトルは、何のひねりもないものになりました。
おわり。