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ますだ沼暮らし。

KAGUYAの歌詞を竹取物語と並べて考察してみる

NEWSニューシングル『KAGUYA』が、かぐや姫をモチーフにしているということで竹取物語に興味を持った人は多いと思います。私も久しぶりに読んでおもしろかったので、『KAGUYA』の歌詞と、歌詞の参考にしたであろう原文の箇所を並べながら見ていきたいと思います。(歌詞→原文→訳の順に記載)

Aメロでは原文の表現に近いかたちで歌詞が作られています。
今は昔 かぐやの姫と
(いふものありけり)
今は昔 竹取の翁と
いふものありけり
訳:今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。

かぐや姫の印象が強い竹取物語ですが、原文ではあくまでも竹取の翁が主人公として書かれています。その点『KAGUYA』はかぐや姫が主人公と言えます。
三月ばかり よきほどとなる
(大人になりぬれば)
三月ばかりになる程に よきほどなる
人になりぬれば
訳:三ヶ月くらい経つと、ちょうどいい大きさの人になったので

歌詞では「ひと」と読む部分の表記を「大人」として、「よきほどなるひと」が大人になった女性なのだと分かりやすくなっています。
原作ではこの後、髪上げと裳着(もぎ)をしたとあります。かつてはこの儀式を行うことで成人となり結婚ができるようになったようです(ただし年齢は12〜3歳くらい)

Bメロとサビは原文に直接当てはまる表現が見当たらないので、内容が当てはまる部分を記載します。
風の噂に聞くほどの
月のように美しきひと
世界の男 貴なるも賤しきも
いかでこのかぐや姫を得てしかな(中略)と
音に聞きめでて惑ふ
訳:世間の男は身分の高い者も低い者も、どうにかしてかぐや姫を手に入れたいと、噂に聞いて恋焦がれて、心を乱した。
今宵 月を見上げたまま
泣かないでくれ KAGUYA
月の顔見るは 忌むことと制しけれども
ともすれば 人間にも月を見ては
いみじく泣き給ふ
訳:月を見るのは不吉なことだと止めるけれど、人の目を盗んで月を見てはひどくお泣きになった。

サビに出てくる「心も心ならず」とは、自分の心も思い通りにならないという意味。また、「SAGA」は物語という意味のサガだと思われます。
サガ 1〖Saga〗〔アイスランド語で,物語の意〕①古ノルド語による古代・中世の北欧散文物語の総称。主に一三世紀以降,アイスランドで成立。アイスランド植民以後のことを年代記風に記したもの。長短百数十編に及ぶ。サーガ。②転じて,(長編にわたる)英雄伝説・武勇伝・冒険談・歴史物語のこと。(大辞林より)

続いて2番Aメロ。
姫の家に 入りて見れば
(きよらにていたる)
かぐや姫の家に 入り給うて見給ふに
光満ちて 清らにていたる人あり
訳:かぐや姫の家にお入りになってご覧になると、光が満ちて清らかな人がいた。
これならむと おもひて とらへて
(のがさじとすとて)
これならむとおぼして 逃げて入る袖をとらへ給へば(中略)
許さじとすとて
訳:この人であろうと思われて、奥へ逃げようとする袖を捕まえると、許さないと言って

「許さじ」というのは、かぐや姫が奥へ逃げることを許さない、つまり「のがさじ(逃さない)」という意味。

2番Bメロ。
追えば霧となるあなたを
今日も想うだけ 月のように
なほ率いておはしまさむとて
神輿を寄せ給ふに
このかぐや姫 きと影になりぬ
訳:どうしても連れて行くと言って神輿をお寄せになると、かぐや姫はぱっと消えて影になった。

2番はずいぶん話が進んで、帝が求婚する場面まで来ました。竹取物語ではまず5人の男性がかぐや姫に求婚しますが、失敗に終わります。その後登場するのが帝です。
竹取物語というと、求婚してきた男性に無理難題を課す部分のイメージが強いですが、最終的にかぐや姫と心を交わし、月へ帰るのを見届けるのは帝です。
ここからは『KAGUYA』の主人公=NEWSが帝と想像しながら、竹取物語の終盤を復習してみたいと思います。
かぐや姫の御もとぞ 御文を書きて通はせ給ふ(中略)
かようにて 御心を互ひに慰め給ふほどに
三年ばかりありて
訳:かぐや姫のもとへ手紙を書いてお送りになった。このようにして心を互いにお慰めになるうちに三年ほど経って

文通で心を通わせたかぐや姫と帝でしたが、いよいよかぐや姫が月に帰る時が来てしまいます。帝は兵を遣わせて阻止しようとしますが、止めることができませんでした。かぐや姫は最後に帝へ手紙を書きます。
かぐや姫(中略)いみじく静かに
朝廷に御文奉り給ふ
訳:かぐや姫は大変静かに、帝へ手紙を書いた。

手紙の内容は、兵を遣わせてくれた帝へのお礼と、どうしても月に帰らなければいけないということ、無礼な印象を残してしまうことが心残りだというものでした。
いまはとて 天の羽衣 着る折ぞ
君をあはれと 思ひ出でける
訳:もうこれまでと思って天の衣を着るのですが、あなたをしみじみと思い出しています。

このような歌を詠んで、かぐや姫は月へ帰ってしまいます。かぐや姫が遺した手紙と歌、そして不死の薬を受け取った帝は、食事も喉を通らず、遊ぶこともしなくなりました。
逢ふことも 涙に浮かぶ 我が身には
死なぬ薬も 何にかはせむ
訳:逢うこともできず涙を流す私には不死の薬も何の役に立つのだろうか

帝はこう言って、かぐや姫の手紙と不死の薬を最も天に近い山の頂上で燃やさせました。その山はふじ山と名付けられ、燃やした煙は今でも天に昇っていると言い伝えられています。
おわり。